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陰陽が形になる! 易経の『八卦』で見る世界のかたち

Tags: 易経, 八卦, 陰陽, 基礎, 自然

易経の『八卦』って何だろう? 世界を形作る8つのサイン

以前の記事で、易経の最も基本的な考え方である「陰(いん)」と「陽(よう)」についてお話ししました。この二つの力が、私たちの世界のあらゆる変化やバランスを作り出している、というものでしたね。

今回は、その「陰」と「陽」がさらに組み合わさって生まれる、易経のもう一つの大切な考え方、「八卦(はっけ)」について見ていきましょう。この八卦を理解することで、易経が私たちの周りの世界や心の動きをどのように捉えているのか、その全体像がもっとはっきりと見えてくるはずです。

陰と陽が重なってできる「八卦」

覚えていますか? 易経では「陽」を一本の棒線(⚊)、「陰」を途切れた線(⚋)で表します。この二種類の線が、それぞれ三本ずつ縦に重なってできる組み合わせが「八卦」なのです。

ちょうど、ブロックを三つ積み重ねて、いろいろな形を作るようなイメージです。陽の線と陰の線を、一番下、真ん中、一番上、と三つの位置に置いていくと、全部で八通りの組み合わせができます。これが「八卦」です。

八卦はそれぞれ、特定の意味や象徴を持っています。私たちの身近にある自然の風景や、人間の心の動き、家族の関係性など、さまざまなものを表しているんですよ。難しく考える必要はありません。まるで言葉を持たない記号が、たくさんの意味を教えてくれると想像してみてください。

八卦が表す身近な世界

それでは、八卦が具体的にどのようなものを表しているのか、見ていきましょう。どの卦も、私たちが日頃目にしたり感じたりしているものと結びついています。

1. 乾(けん):天、父、力強さ

三本すべてが陽の線(☰)でできています。 これは、広大な「空」や「天」を象徴し、そこからくる力強さや積極性を表します。家族の中では「父」のような存在です。 * 例え: 晴れ渡った青空。力強く前へ進むリーダー。

2. 坤(こん):地、母、受け入れる心

三本すべてが陰の線(☷)でできています。 大地のように広くて包み込むような「地」を象徴し、受け入れる心や育む力を表します。家族の中では「母」のような存在です。 * 例え: 豊かな恵みをもたらす大地。広い心でみんなを受け入れる人。

3. 震(しん):雷、動き出す力、長男

下から一本目が陽の線で、上二本が陰の線(☳)です。 突然の「雷」のように、驚きや動き出す力を表します。何か新しいことが始まる瞬間のエネルギーです。家族の中では「長男」です。 * 例え: ゴロゴロと鳴り響く雷鳴。新しい挑戦を始める勇気。

4. 巽(そん):風、浸透する、長女

下から一本目が陰の線で、上二本が陽の線(☴)です。 どこへでも入り込む「風」のように、穏やかに浸透する力や、素直に従うことを表します。家族の中では「長女」です。 * 例え: 木々の間をそよぐ風。相手の気持ちを察して行動する優しさ。

5. 坎(かん):水、困難、中男

真ん中が陽の線で、上下が陰の線(☵)です。 「水」のように流動的で、時には深く沈んだり、困難な状況を表すことがあります。しかし、水はどんな形にもなれる柔軟さも持っています。家族の中では「中男」です。 * 例え: 深く静かに流れる川。予期せぬ問題に直面しても、粘り強く乗り越える力。

6. 離(り):火、明るさ、中女

真ん中が陰の線で、上下が陽の線(☲)です。 周りを照らす「火」のように、明るさや輝き、知性を表します。はっきりと見せることや、別れることも意味します。家族の中では「中女」です。 * 例え: 夜空を照らす炎。自分の意見をはっきりと表現する様子。

7. 艮(ごん):山、止まる、少男

一番上が陽の線で、下二本が陰の線(☶)です。 そびえ立つ「山」のように、停止や安定、どっしりとした不動の力を表します。物事を一旦立ち止まって考える時にも関係します。家族の中では「少男」です。 * 例え: 泰然自若とした山。じっくりと考えて結論を出す慎重さ。

8. 兌(だ):沢、喜び、少女

一番下が陽の線で、上二本が陰の線(☱)です。 水が溜まる「沢(さわ)」のように、喜びや楽しみ、満たされる場所を表します。また、口や言葉とも関係します。家族の中では「少女」です。 * 例え: 小鳥たちが集まる水辺。楽しい会話や笑顔。

八卦で見る、世界の移り変わり

このように、八卦はそれぞれが、私たちの身の回りにある様々な現象や、人間の心の状態、物事の動きをシンプルな形で表しています。

易経では、これらの八卦が二つずつ組み合わさることで、さらに複雑で具体的な「六十四卦(ろくじゅうしか)」というものが生まれます。私たちが「占う」時に見るのは、この六十四卦のメッセージです。

しかし、まずはこの八卦の持つ基本的な意味を知るだけで、易経が単なる占いではなく、世界を理解するための素晴らしい「ものの見方」であることが感じられるはずです。空や山、風や雷、そして私たちの心の中にも、八卦のメッセージが隠されていると考えると、日々の生活が少し面白く見えてきませんか。

易経は、このようにシンプルな記号を通じて、私たちの世界の複雑な変化と、その中での最適な生き方を教えてくれる、古くからの知恵の書なのです。